スマホの中には、スケジュール管理・連絡手段・写真管理・娯楽など、さまざまなアプリが並んでいます。
その中には、見た目や操作方法がバラバラでも「なぜか使い続けてしまうアプリ」が存在します。
この差を生むのは、色やフォントのような表層的な部分ではありません。ユーザーが迷わないよう、緻密に構造化された「設計思想」にあります。
その中でも特に重要なのが、今回ご紹介する「オブジェクト指向UI(OOUI)」です。本記事では、UI設計の質を劇的に高める「オブジェクト指向UI」の基本を、図解を交えながら分かりやすく解説します。
そもそも「オブジェクト指向UI」とは?
一言でいえば、以下の設計思想を指します。
タスク(やること)ではなく、オブジェクト(扱う対象)を中心に設計されたUI
例えば「写真アプリ」を例に考えてみましょう。
- タスク指向: 「編集」「削除」「共有」といった “動作” が最初に来る
- オブジェクト指向: 「写真」「アルバム」といった “対象(オブジェクト)” が中心に来る
名著『オブジェクト指向UIデザイン ― 使いやすいソフトウェアの原理』でも、次のように定義されています。
「対象(オブジェクト)を起点としてUIを構成する」
(引用元:『オブジェクト指向UIデザイン』1-1章より)
一目でわかる「タスク指向」と「オブジェクト指向」の違い
UIのアプローチは大きく分けて2種類あります。書籍ではこの違いを 「Verb(動詞)→ Object(名詞)」 ではなく、「Object(名詞)→ Verb(動詞)」 の順序が自然であると解説されています。(同書参照)
両者の違いを比較してみましょう。
| 特徴 | タスク指向UI (Bad) | オブジェクト指向UI (Good) |
| 思考の起点 | 「〜したい」から始まる | 扱いたい「対象」から始まる |
| 画面の主役 | ボタンやメニュー(動詞) | 一覧リストやアイコン(名詞) |
| 操作の流れ | 手順が固定されやすい | 自由度が高く、自然 |
| デメリット | モーダル(ポップアップ)が増えがち | 特になし(迷いにくい) |
【具体例】家族写真アプリで比較してみる
より具体的にイメージするために、家族写真アプリのトップ画面を想像してみてください。
❌ タスク指向UIの場合
トップ画面に、動詞のボタンがずらりと並びます。
- 「写真を見る」
- 「編集する」
- 「削除する」
- 「アルバムを作る」
⭕️ オブジェクト指向UIの場合
トップ画面には、ユーザーが見たい“対象”が表示されます。
- 写真一覧
- アルバム一覧
- イベント一覧
まず対象を選び、その詳細画面で「編集」や「削除」といった操作を行います。

なぜ、後者が自然なのか?
それは、人は日常生活で「編集したい!」といきなり思うことはないからです。「この写真を、編集したい」というように、常に「対象」が先にあり、その後に「意思(タスク)」が生まれるからです。
オブジェクト指向UIがもたらす4つのメリット
書籍の内容を参考に、実際にアプリへ実装した際のメリットを整理しました。
① 学習コストが低い
ユーザーの思考(対象 → 操作)に沿っているため、説明書がなくても直感的に使えます。最初に対象が見えている安心感は絶大です。
② 操作効率が高い
「モード選択」や「強制的な手順」が減ります。ユーザーは必要なタイミングで、必要な操作だけを行えるようになります。
③ 機能追加に強い
「オブジェクト」を軸にしているため、後から機能(動詞:フィルター加工、スタンプなど)を追加しても、UI全体が破綻しにくい構造になります。
④ 一貫性のあるUIが作りやすい
オブジェクト単位で以下の要素を整理できるため、チーム開発でもブレが生じにくくなります。
- 表示 (Contents)
- 編集 (Composed)
- 設定 (Settings)
- ヘルプ (Help)
デザイナーが知っておくべき「本質」
オブジェクト指向UIの本質は、単なる見た目の美しさではありません。
“ユーザーの頭の中にある世界(メンタルモデル)を、そのままUIへ写し取ること”
何を中心に据え、何を見せ、何をさせるのか。
これらを論理的に設計することで、「使いやすさ」は自然と生まれてくるのです。
まとめ
- オブジェクト指向UIとは: 「タスク」ではなく「オブジェクト(対象)」を中心に設計する手法。
- 最大のメリット: ユーザーの自然な思考に合致し、学習コストと操作効率が向上する。
- ビジネス的価値: 拡張性が高く、長く愛されるアプリの基盤となる。
アプリのUI/UX改善を検討している企業にとって、オブジェクト指向UIの理解は、競合と差別化し、ユーザーに選ばれ続けるための最重要要素と言えるでしょう。
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